Home > YRS Media-Info >

≡≡ Yui Racing School presents ≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

Go ★ Circuits No.129 (04/14/02発行)

===================================

【 129号の目次 】

◎ 筑波サーキット公式ドライビングスクール その2

● 吉田塾 日程変更&参加申込み受付中

○ YRS感謝デー参加申込み受け付け開始

▲ 第2回YRS参加申込み受付中

△ How to teach how to

☆ ハウツゥスタート 人間の意識と機械の性能

★ コーナーの向こうに 第六話 青春の旗 第10回 トム ヨシダ

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

◎ 筑波サーキット公式ドライビングスクール その2

>>> === どなたでも参加できます === <<<

筑波サーキット唯一の公式ドライビングスクールである筑波ドライビングワー
クショップに次ぐ新しいカリキュラム。その概要が決まりましたのでお知らせ
します。名称は筑波サーキットドライビングワークアウト(TDO)。

TDOは筑波サーキットのジムカーナ場を使って行います。筑波ドライビング
ワークショップも午前中にジムカーナ場を使っていますが、TDOは終日ジム
カーナ場を使います。

早朝に集合した後、座学を行います。テーマはビークルダイナミックス。クル
マを正確に操る、つまり安全に速く走らせるために必要な知識をお伝えします。
座学は約50分。

ジムカーナ場で最初に行うのは直進状態でのスレッシュホールドブレーキング
の練習。本来サーキット走行では止まるためのブレーキングは必要ありません
が、スムースなトランジッションを習得するためにはスレッシュホールドブレ
ーキングの練習がうってつけです。また高い減速加速度を発生させるための正
確な制動力のコントロールを練習できます。おそらく参加された方は、制動距
離が踏力よりもクルマの挙動によって左右されるものだというショッキングな
事実に直面するはずです。ビークルダイナミックスの第1歩です。

次ぎにTDWでも使用する2種類の定常円を使った『加速→減速→旋回』の練
習を行います。テーマは2つの形状の異なる定常円を『連続してできるだけ速
いペースで周回』することです。求められるのは正確な操作。ドンッとアクセ
ルを踏み、ギャンッとブレーキをかけ、スパッとステアリングを切っただけで
はクルマは速く走りません。全ての操作はクルマに姿勢変化をもたらします。
連続して変化します。姿勢変化はクルマの特性を変えます。特性が変化し続け
るということです。速く走るためには『どういう操作』が求められるのか。ど
んな操作が○でどんな操作が×が検証します。

質疑応答を行いながらのランチタイムをはさみ、午後は定常円を大きなものひ
とつにしてより高い速度で『加速→減速→旋回』の練習を行います。午前中行
う定常円より直線でもコーナーでもスピードが出ますから、求められるものも
変わります。よりサーキットのコーナーに近い速度で『ビークルダイナミック
スとは何ぞや』というテーマに向かい合います。

TDOを何回か消化した時点で、大きな定常円を使ったコンペティっションを
開催します。スケジュールに掲載してあるTDOC(筑波ドライビングワーク
アウトコンペティっション)がそれです。原則としてTDOを卒業された方を
対象に開催します。具体的にどんな競技か説明します。

2台のクルマが定常円の中心を挟んだ位置に止まります。2台が同時に発進し
定常円を『連続してできるだけ速いペースで周回』します。過去の例から見て
もパワーのあるクルマが絶対に有利ということはありません。間違いなく2台
のクルマの間隔は縮まり(開き)ます。相手を意識しながら、いかに自分の走
りができるかの練習です。

競技では定常円のラップタイムを計測する予定で準備を進めています。おそら
く1周13〜15秒のラップタイムになると思われますが、それを連続して計
測し、ウェブサイトに掲載する予定です。

詳細は決まり次第お知らせしますが、最大の見ものはノーマルのクルマが足を
固めたクルマを追いまわすシーンになるはずです。性能的に勝るクルマを的確
なカーコントロールのできるドライバーが、またパワーに勝るクルマをフット
ワークのいいクルマが追いまわすシーンもあるでしょう。『アメリカンオーバ
ルレースの原点』がそこにあります。

どちらのカリキュラムも、おそらく1日中走りっぱなしになるはずです。クル
マの操作に慣れたい、あるいは自分の操作を見なおし対という方にはうってつ
けのプログラムです。筑波ドライビングワークショップ同様平日の開催です。
興味のある方はスケジュールに日程を掲載してありますのであらかじめ予定を
立てておかれることをお勧めします。

・筑波ドライビングワークアウト開催案内
http://www.avoc.com −> SCHOOL −> ワークアウト

・ユイレーシングスクール 2002年スケジュール改訂版:
http://www.avoc.com −> SCHOOL −> スケジュール

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

● 吉田塾 日程変更&参加申込み受付中

>>>* * * * どなたでも参加できます * * * *<<<

スケジュールの調整上、5月18日開催予定の吉田塾を25日に変更します。

吉田塾の参加申込みを受付中です。参加費4000円(夕食、飲み物を含む)
は当日お支払い下さい。

http://www.avoc.com −> SCHOOL −> 吉田塾

#ドライビングテクニックはもちろん、モータースポーツやクルマについての
造詣の深いユイレーシングスクールシニアインストラクターの話を聞きに来て
下さい。

また3名以上参加者が集まれば臨時に吉田塾を開校します。サーキットなどへ
出張しての開校も可能です。詳細はお問い合わせ下さい。

問い合わせ先:
mailto:mail@avoc.com

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

○ YRS感謝デー参加申込み受け付け開始

ユイレーシングスクール主宰のスクール及びイベントに参加された方を対象に
開催しているYRS感謝デー。今年春の開催要項が決まりました。

日時:5月19日(日)
場所:久我農園(千葉県長生郡一宮町)
募集人数:30名
参加費用:大人3,000円 子供1、500円
プログラム:さつまいもの苗植えとバーベキュー

| ※参加費用には苗代、バーベキューの食材、清涼飲料水の費用が含まれてい
| ます。春に苗を植え、秋に開催する第3回YRS感謝デーで収穫します。

YRS感謝デー開催案内:
http://www.avoc.com −> SCHOOL −> その他のイベント

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

▲ 第2回YRS参加申込み受付中

今年2回目のYRSが5月11日に開催されます。内容は恒例の筑波エンデュ
ーロ、筑波スプリント、筑波タイムトライアルです。

|※平日のスクールに参加するのが難しい方には座学と実技でサーキットの走り
方を習得していただく筑波タイムトライアルへの参加をお勧めします。

筑波エンデューロは前回8台の参加でした。12台まで出走できます。参加を
お待ちしています。今回も2台のスクールカーを用意しました。レンタルを希
望される方は連絡して下さい。

前回の筑波スプリントでもほとんどの方がタイムアップを果たしました。現在
の走りから1歩ステップアップしたい方ににお勧めです。1周の予選と3回の
ヒートレースで自分の持てる力を存分に発揮してみて下さい。

筑波エンデューロ規則書:
http://www.avoc.com −> SCHOOL −> エンデューロ

筑波スプリント規則書:
http://www.avoc.com −> SCHOOL −> スプリント

筑波タイムトライアル開催案内:
http://www.avoc.com −> SCHOOL −> タイムトライアル

車両レンタル問い合わせ:
mailto:mail@avoc.com

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

△ How to teach how to

より多くの方にスポーツドライビングの楽しさを体験していただくことができ
るように、筑波サーキット公式ドライビングスクールは5月から新しいカリキ
ュラム、筑波ドライビングワークアウトを追加します。

モータースポーツの入り口であるスポーツドライビングは、その潜在的な危険
性とは裏腹に安全に速く走るための手ほどき、つまり走り方を教えてくれるシ
ステムが確立していません。

スキー場に行けばそこかしこにスキースクールの看板が出てますし、スクール
自体も短時間で終わるものから何日にもわたる本格的なものまでユーザーのデ
マンドに合わせたシステムがあります。テニスやゴルフなどのスポーツにもス
クールは用意されています。他の趣味に比べて費用がかかり、危険さえともな
うスポーツドライビングに十分なスクールが用意されていないのは残念なこと
です。

しかしながら、スクールの数が多ければそれでいいかと言うとそうでもないの
です。何かを始める時、情報化の進んだ現代社会では手軽に手に入る情報に頼
ることになります。自分自身の力で独学で道を開くということはきわめてまれ
なことです。するとスクールで教える内容も、そのスポーツをするのに最低限
必要な情報を提供できるものでなくてはならなくなります。

昨年から始めた筑波ドライビングワークショップはスピードドライビングを始
めるにあたって学ぶべきことを1日で体験できる構成になっています。サーキ
ットを走ったことのない方からレースに参加したことのある方まで幅広い層を
対象としたスクールです。

今年始まる筑波ドライビングワークアウトはさらに広い層を対象としています
。サーキットを走るつもりはないが上手にクルマを運転したい人や、新しく手
に入れたクルマの特性を確かめるためにクローズドコースで走ってみたい人。
あるいは気軽にモータースポーツに参加してみたい人など、より多くの方が参
加して「面白かった!」と言える内容に仕上げることができたと思います。

昨年1年間の統計から数字を拾うと、筑波ドライビングワークショップの受講
生の10.1%が女性でした。今年開催した筑波ドライビングワークショップ
と筑波ドライビングワークショッププラスではそれが11.1%に増えました。

全くのノーマルカーで参加した受講者の数を比較すると、昨年が32.8%で
今年が35.3%。サーキットを走ったことのない方の参加は昨年が28.0
%で今年が28.1%。数字から見てもスクールがより多くの方に支持されて
いることを示しています。

モータースポーツはもちろん、スポーツドライビングは自己責任が強く求めら
れるスポーツです。筑波ドライビングワークアウトと筑波ドライビングワーク
ショップを活用し、あなたも安全に速くクルマを走らせる方法を見つけてみま
せんか?

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

☆ ハウツゥスタート 人間の意識と機械の性能

4月9日。筑波ドライビングワークショップの卒業生を対象とした筑波ドライ
ビングワークショッププラスの2回目が開催されました。受講したのは男性1
2名、女性4名の計16名。

TDWPでは積極的にクルマをコントロールすることを勧めています。今回も
参加された全ての方がキチンとクルマをコントロールできるレベルに達してい
ます。どうしたら理にかなった操作をしながらさらなるタイムの短縮を果たせ
るか、というのがTDWPのテーマです。

そのテーマにそって、受講者は全員が受信機をつけリアルタイムのアドバイス
を受けながらスレッシュホールドブレーキング、大きな定常円、コース1Kの
ラッピングとじょじょに次ぎの次元のカーコントロールに挑みます。

今回は2名の方がカーコントロールを基本から復習するために車両を変更して
きました。一人はそれまで乗っていた4WDハイパワーセダンをNAのFRに、
もう一人は固めていたサスペンションをノーマルに戻して参加されたので、過
去の記録と直接比較はできません。従って、次ぎの数字は参加16名中14名
を元にしたものです。

結果はと言うと、過去に記録したラップタイムを上回った受講者は6名でした。
最も短縮された方は1.2秒も速くなりました。と言っても、クルマを振り回
して搾り出したタイムではなく、クルマをスムーズに走らせながら速くなった
のですから注目に値します。傍から見ていると速く走っているように見えない
のにライムを確実に削っていきます。

それとは反対に8名の方が過去に記録したタイムを更新できませんでした。だ
からと言って、この8名の方の腕が落ちたのかというとそんなことは全くあり
ません。ユイレーシングスクールが提案する『再現性のある走り』ができてい
なかったのかというと、そんなこともありません。

さて、今回もインストラクターはいくつかのコーナーで受講者の走りを観察し
ました。結論から言うと、今回の受講者は全員が程度の差こそあれ4輪を滑ら
せてコーナーを回っていました。しかもバランスを崩さずにです。特に1コー
ナーなどは、ほぼスリップアングルの限界に近いところを使ってドリフトして
いました。ですがカウンターステアを切るわけではありません。あくまでもク
ルマのバランスを保ちながらクルマを滑らせていたのです。

ストレートを加速してきます。ブレーキングを開始します。モメンタムが加速
から減速にスムースに転換されます。ステアリングに微舵角を与えます。重た
いクルマの直線運動に少しだけ円運動が加わります。過重が抜けている後輪が
スライドを始めます。過重のかかっている前輪が逃げるはずがありません。ス
ロットルに右足を戻しイーブンスロットルの状態を作り出すことによってリア
のスライド量が減ります。ステアリングを切り足します。もちろん前輪にもス
リップアングルがついていますから、アウト側にスライドしていきます。直線
運動が円運動に変わります。こうしてクルマは4輪を滑らせながら1コーナー
の奥深くに進んでいきます。

具体的に操作と挙動の因果関係を振り返って見ます。1コーナーを例に取りま
す。
・フロントに過重を残したまま舵角を与えた。(ので、非常に少ないステアリ
ングワークでクルマのロールが始まった。フロントアウト側のタイヤのキャパ
シティを上げると同時にリアのコーナリングフォースを減じ積極的にクルマの
向きを変えた)
・コーナリング初期にイーブンスロットルにしてクルマを安定させ舵角を増し
た。(ので、高いコーナリング速度を維持しながらクルマの向きを変えること
ができた。ロールの始まったクルマにさらにロールをさせアウト側2輪のコー
ナリングフォースを高めた)
・2コーナーの脱出で横Gが消えるまでスロットルをコントロールした。(の
で、コーナリング中にアンダーステアで車速が伸びなくなるのを防げた。横G
の減少にともなって駆動力を増やしたからヘアピンのブレーキングまで加速す
ることができた)
ということになります。

そう。タイム更新のならなかった受講者も、クルマの性能をかなりのところま
で引き出して走っていたのは事実です。タイム更新がならず首を傾げていた方
もいましたが、カーコントロールに関してはかなりのレベルに達しています。

では、なぜ8名の方はタイムを更新できなかったのでしょうか。最大の原因は
『今の記録がクルマの性能からすると遅くはない』からです。つまりクルマの
おいしいところをかなり引き出して走っているわけで、『クルマ側には今以上
にドラスティックにタイムアップをはかる余力が残されていない』とも言えま
す。ですから、これから先のタイムアップは、それこそ『針の穴に糸を通す』
ような操作が求められる種類のものなのです。

次ぎに、コーナーで見ていると『滑りすぎ』のクルマを何台も目にしました。
滑らせて積極的にクルマの向きを変えてはいけないのか?というとそんなこと
はないのですが、程度問題ということもあります。今のタイヤのスリップアン
グルはごく小さいものです。そのスリップアングルを越えるとタイヤのグリッ
プは急激に低下します。ですから『過ぎれば』たくさん流れるのです。ところ
が、既にカーコントロールは身につけていますから、バランスを崩さずにまと
めることができます。そこに盲点があります。

流すことが積極的な走りにつながることは確かですが、流し過ぎは失速を招き
ます。つまりタイムは遅くなります。これがレーシングドライバーにもよく見
られる『停滞』です。言葉は適切ではありませんが、「なまじっかクルマをコ
ントロールできるものだから、オーバースピードでコーナーに入ってもなんと
かしてしまう。結果的に遅くなっているのに気付かず、クルマをコントロール
していることを速く走っていることと錯覚してしまう。」ということです。

おそらく8人の方が以前にもっと速いタイムで走った時は、カーコントロール
に慣れていないせいもあったのでしょうが、もっと丁寧に慎重に操作していた
のだと思います。クルマの状態を感じ取るのにより繊細だったのではないでし
ょうか。クルマを主に考えて運転していたはずです。今回は、自分のスキルア
ップが自分の『速く走ってやろう!』という欲に負けてしまった、ということ
でしょう。

タイヤにもクルマにも固有の限界があります。限界に近づけばおいしいところ
はどんどん狭くなります。常においしい範囲で走りつづけるのは至難の技です。
ですが、逆に言えば「おいしいところを探すことができるカーコントロールは
既に身についている」とも言えるのですから、その意味では今回タイムアップ
した、しないに関わらずクルマの操作について得るものは多かったはずです。

実際、10名の方が3回の計測セッションを通じてタイムアップしました。4
人の方が2回目。2人の方が3回目にこの日のベストラップを記録しています。
少なくとも5回の走行セッションを通して『何をすべきか』を理解して走って
いるということです。

今回タイムアップのならなかった方も凹む必要はありません。『自分ができる
からやる』操作ではなく、『クルマが求めるから、速く走るのに必要だからや
る』操作をすればタイムは縮まります。

あの日、自分がどんな運転をしていたか思い出すことができれば、何かヒント
があるはずです。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

★ コーナーの向こうに 第六話 青春の旗 第10回 トム ヨシダ

「デグナーを立ち上がった910が振られてスピンして、それでアウト側に飛
び出したんだ。立体交差の下のコンクリートにぶつからなくて良かったよ。」
そう言おうとして言葉を飲み込む。夕飯が終わったあとの恒例の宴。その日の
出来事を<成果>のように話すオフィシャルを見ていると虚しくなる時がある。

「当事者にとっては大変なことだったはずだ。それを鬼の首を取ったみたいに
・・・。いつかのレースのように、抜けるはずのない2コーナーのアウト側に
出て並んだまま3コーナーを立ちあがった金田政行のような場合はいいんだ。
結局トップでS字に入っていったあの走りはみんなが知っておくべきなんだ。
だが・・。」

コーナーポストがレースを見るための特等席であってはならない。そう思う。
禁じられているカメラを隠して持ってくるオフィシャルもいるが、それは間違
っている。そう思う。自分は傍観者ではない。

部屋に戻る。夕飯前に行われたドライバーズミーティングを覗いた時にもらっ
た予選結果を広げる。

「そう言えば、今日のドラミはいろいろとあったな。予選の通過基準も変わっ
たし、明日雨だったらレース距離も短縮だもんな。」

予選結果には50台の車名と100人のドライバー名が並んでいる。1300c
c上下で分けたクラス。TS(特殊ツーリングカー)とGTS(特殊グランド
ツーリングカー)とR(レーシングカー)。予選1位には永松邦臣と田中健二
郎のローラT290。タイムは2分34秒0。「2ヶ月前に鈴鹿500Kmで
2分6秒5のコースレコードを記録した永松も雨には勝てず、か。」降り続い
た雨のせいでドライより30秒近く遅い。それでも曲がりくねった右8個左8
個のコーナーを持つ6004mのコースを平均時速140Km以上で走ってい
る。

予選2位には鮒子田寛とW.ショウのシェブロンB21P。3位には田中弘と
高武富久美のシェブロンB19。2位と3位は2分38秒3の同タイムだが、
2番目に速いタイムが鮒子田のほうが上回っていた。

3分40秒の最低基準タイムを上回り、かつ予選タイムを基準にクラス毎の参加
台数に応じて4台なり8台が優先的に選ばれ、残ったグリッドをタイム順に埋
めていく。

ドライなら上位にずらっと並んでいたはずのレーシングカーは、結局3位まで。
都平健二と長谷見昌弘のフェアレディ240Zが2分43秒で4位に食い込ん
でいる。2600ccまでスケールアップしたL24エンジンを搭載した24
0Zは6位から8位にも入っている。並んだ車名を上から追っていく。

「エェ〜ッ、ホント?」

予選5位のセリカRは当然だとして、9位に1300ccのカローラが入って
いるのに驚く。「なんでだろう?」元トヨタワークスドライバーとは言えベテ
ランの細谷四方洋と蟹江光正がそれほど速いとは思えない。「タイヤなのかな
ぁ?1600ccのレビンが10位でそれより速いんだもんなぁ。」

11位には片山義美と従野孝司のサバンナRX3、12位には歳森康師と星野一義
のサニー1200、13位には浅岡重輝と米村太刀夫の国産ツーシーターレーシ
ングのベレットR6。良き時代を象徴するかのように実に様々なクルマが結果
表に並んでいる。

「50台だもんな。トップと最後尾で54秒差かぁ。ドライだと差は少なくなるは
ずだけど、明日は忙しくなりそうだな。なんたってひとりだもんな。でもやっ
て見せるさ!」

「明日も雨かなぁ?167周を140周に短縮するとか言ってたけど、それで
も840Km。雨ならやっぱり時間はかかるよな。6時間、いやなんかあった
ら7時間。いやもっとかも知れない。」

レースの流れは理解できるようになったものの、自分がレースに出ることなど
少しも想像できない。目の前で繰り広げられるレースの中に自分を置いてみる
ことなど到底できない。そんなもどかしさを感じながらの鈴鹿での土曜の夜を、
ふたたび迎える。

「そうそう。スタート方法でもめてたけど、やはり富士(FISCO)の真似
はできないということなんだろうか?コドライバーがコースの反対側から駆け
てきてマシンのそばに立っているドライバーにタッチする。それでドライバー
がマシンに乗りこんでベルトしてエンジンをかける。なんかピンとこないなぁ。
ドライバーの靴が濡れるのがいやだったら最初から乗りこんでおけばいいんじ
ゃないかな。でもそれだとスタートがバラけないか。」

いろいろなことが頭をよぎる。眠くもあり目が冴えている風でもある。修学旅
行用に作られた丈の短いベッド。つま先を伸ばすと壁に当たる。リズムをとっ
てつま先で壁をたたいているうちに睡魔が襲う。

* * * * * * *

熟睡したようでしていないような気だるい感じでまどろんでいると腕時計のア
ラームが鳴る。他の7人はまだ夢の中。そうっと起き出して窓の外を見る。張
り出したひさしからしずくが落ちるのが目に入る。芝生も植えこみもしっとり
濡れて光っている。

「やっぱり雨か!どんなレースになるかわからないけど、やるかねぇ。」

いつもの通りの朝食をいつもの通りに終え、濡れながらパドックに向かう。マ
イクロバスに乗ろうとすると後ろから、「吉田君。頼むわぁ」鈴木コース副委
員長の名古屋弁のイントネーションを含んだ声が追い駆けてくる。オフィシャ
ルの人数が十分ではなく、14番にひとりで入らなければならないのを気遣って
くれている。

「大丈夫です。」振りかえって笑顔で応え、自分にもそう言い聞かせながらマ
イクロバスのステップに足をかける。


******************************************************** 奥付け ******
□ メールマガジン " Go − Circuits "
□ 有限会社ユイレーシングスクール発行
□ オリジナルサイト:http://www.avoc.com
□ Copyright Yui Racing School Co.,Ltd.
□ Copyright 1986-2001 AVOC CORPORATION

本メールマガジン、オリジナルサイトの全部、または一部を複製
もしくは引用されたい方は、事前に発行人までご連絡ください。

mailto:mail@avoc.com
----------------------------------------------------------------------
下記のURLで購読中止・配信先変更の手続きが行えます。
◇ まぐまぐ: http://mag2.com
◇ ココデメール: http://mail.cocode.ne.jp/kaijyo.html
◇ パブジーン:http://www.pubzine.com/detail.asp?id=2150
◇ クリックインカム: http://clickincome.net/mg_lt/car1.html

≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡ Presented by Yui Racing School≡