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コーナーの向こうに ラップタイム(4) - YRS Mail Magazine No.102より再掲載 -

ラップタイム ( 第4話 )

発進でエンストしない程度、できるだけスロットルを開けないでクラッチをつなぐ。いつものことだ。常に最低限の操作を行い必要なものを手に入れる「クセ」をつけるためだ。

コース上に降り立ったスターレット。もちろん、スリックタイヤはまだ冷たい。ステアリングも軽い。

とにかく、誰かに抜かれるまではスターレットの前には誰もいない。些細なこと、長くは続かないとわかってはいるが気持ちがいい。

タイヤを暖めるためのウエイビングはしない。タイヤが減ると困る。

意識的に視線を遠くに送る。1コーナーの上りが見える。かなり急。4速までシフトアップし坂を登る。回転が落ちる。「なんてこった!こんな上りふつうの道にもないゼ。逆回りしたらこわそうだな!」3速に落とし先に進む。正面に見えるのは「途切れたコース」とその上の空、だけ。上りながらコースがわずかに左に曲がる。

「1コーナーのアウトに出すぎるとつながらないな。」

勾配が緩やかになる。「ここでは浮くのかな?」右回りの3コーナーが姿を見せる。「ギョエー!ブラインド!どんな姿勢ではいるんだ?」

目に飛び込んでくる風景がイメージとして頭の中に吸い込まれる。頭がカラッポだからいくらでも入る。

3コーナーの左手は広大な空き地(?)だがイン側はエスケープソーンが2mほど。3mほど上がったところに林が迫る。木々の間にカラフルなテントが見える。「こんなとこでもテント張ってんだ。」3コーナーを回りこむ。右手に林。左手に空き地。左回りの長い4コーナーが目に入る。「長〜い!」直感的に3速のコーナーだと知る。「3から4へのつなぎが鍵だな。」

大きく左に回りこむ4コーナーは入り口から出口まで見通せる。その代わり(?)、その先は見えない。アウト側に2mもエスケープソーンのない4コーナーを進む。

またしてもブラインド。エッセスと呼ばれるS字コーナーの入り口。4コーナーを抜けて右に回りこんでいるが先が見えない。見えないと思って進むと今度は下り初めて先が見えない。「なんちゅうコーナーなんだ。しかもすごい下り。」

下りながら左に向かう。その先にのぼりのヘアピン、ターン5が見える。エッセス最後の右でコースは上り始める。

「こうしてああしてここへ来てブレーキングか。」

2速に落としヘアピンを回る。なんと、立ち上がりでまたもや空が見えるだけ。「おもしろそう!」

やっと先が見通せる。が、な、なんとストレートが上下にうねっている。6コーナーまでの間に一度かなり下り、そして上る。4速メイッパイまで加速できる。「休む暇がないな。」

右回りの6コーナー。半径は大きくないし短いコーナー。カントがついている。進入では出口が見えない。7コーナーまでの間に短い直線。「英語ではショートシュートなんて言ってたな。6コーナー出てアウトにはらむとブレーキングかな?」

7コーナーに向けて緩く上り始めたところでブレーキング。2速に落とす。またしてもブラインドの7コーナーを回る。「さぁ直線だ。」

水温、油温、油圧とも正常。初めて床までペダルを踏む。3速。4速に入る頃少し左にキンクしている。「7を立ち上がってアウトのままいたほうがいいな。」

5速。けっこうなスピードだ。目線を遠くに送る。遠くにコースが右に折れているのが見える。またもブラインドコーナー。近づくにつれ、コースがわずかに下り始めているのに気付く。

若干スロットルを戻し、あえてインベタのまま右の9コーナーを回る。先がどうなっているかわからないから。

で、視界が開けて驚いた。またもコースはかなりの勢いで下り、下りきったところにエスケープゾーンのない左コーナーがある。その先に目をやれば、9コーナーより高いところにかかっている橋が見える。コースはその間に収まっている。

あれやこれや、多分頭はフル回転しているんだろうが、そんなこととは関係なく路面は急な上りにさしかかり、目は「その先がどうなっているかわからない」橋に吸い寄せられる。とりあえずコースの真中からアプローチ。ブレーキングして4速に。まだ先は見えない。

橋の下にさしかかろうという時、11コーナーの全貌がわかる。半径は小さくないが短いコーナーで、橋の下あたりからまたもや急な下り。しかも11コーナーの出口はピットロードになっている。コースとはペイントで仕切られているだけだ。「あっち行っちゃうとまずいよなぁ。」

案の定、下りの路面には多数のブラックマーク。「戻ろうとして失敗したんだ!気をつけなきゃ。結局、橋の下で長めのクリップだな。」

意識的に右に目をやると、木立の間に1コーナーがかすんで見える。「なんてレイアウトだ!」自然いっぱいの緑の中に、とんでもないコース。「これで楽しみがまたひとつ増えた!」

ピットロードは上って高台にあるピットに続く。コースはというと、その分の「土手」を正面にしながら進み、これまたエスケープゾーンのない最終コーナーにつづく。下る。下る。

その最終の12コーナー。近づくほどにフラットになるが、インの縁石あたりまでは下りが続く。ブレーキングして3速。アンダーステアを出さないようにゆっくり切り込む。ステアリングに手ごたえがある。スリックタイヤが温まった証拠だ。

ホームストレートに出る。右手に広いグリーン。背後に山が迫る。左手は3mもおかずに土手。その土手からフラッグ台が突き出す。かすかに下るストレートの向こうには、朝コーヒーを飲んだスタンドがかすむ。

「さぁ、どうする?」

ロードアトランタに慣れ親しんでいるとおぼしきドライバーが団子になって右側から抜いていく。

「いきますか!」

第5話に続く

※ 解説用コースレイアウトにあるシケイン(8コーナー)はスポーツカーレースの大きな事故をきっかけに作られたもので、全米選手権の時にはなかった。

≪資料≫