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コーナーの向こうに ラップタイム(5) - YRS Mail Magazine No.103より再掲載 -

ラップタイム ( 第5話 )

初めてのサーキットを走る時に大切なことは、イメージを掴むことだ。イメージができなければラインを創造できない。イメージできないとコーナリングの半径が小さくなるか、多角形になってしまう。だから、まずイメージだ。速さは自然とついてくるものだ。

2周目に入る直線。もう一度深い腹式呼吸。フラッグ台のオフィシャルの顔が見える。OKだ。

ギアは5速。長いようで短い直線を進むと路面が下り始める。正面ちょっと左にスタンドが見える。進む。1コーナーを意識する頃、走っているアウト側のさらに外側にピットロードが合流する。「さっき抜いてったクルマはピットロードを使って大きく外から回りこんでいたナ。」「得か損か?」とりあえずコース幅で走ることにする。

なにがなんだかわからないんだから、長いブレーキングでゆっくり4速に落とす。路面はまだ下り。クルマのバランスをとるためにスロットルペダルに戻した右足に少し力をこめる。ギア比を変更して格段に速くなったステアリングをわずかに切り込む。十分重い。スリックが温まった。速度が高いからほんの少しの舵角なのにはっきりとわかる横Gが立ち上がる。「来た!」

遠くに送り1コーナーのアウトまで「舐めた」目線を戻す。イメージを全面的に信用して舵角を増やす。まだ前後荷重は均一。乗っかったらひっくり返りそうなインの縁石が近づく。が、どうやらここはインによらないほうが速そう。

荷重がアウト側リアにもかかったのを確認しステアリングを切り足す。硬いサスペンションがロールを拒む。遠心力が増し、その分タイヤがコーナリングフォースを発生する。遠心力がさらに増す。が、イン側の2輪もしっかり働いている。前後のロールが同じように感じられることでそれがわかる。

路面がフラットになり上り始める。スロットルをいつもより乱暴に開ける。アンダーステアは?

リアに荷重の移ったスターレットは安定した姿勢で坂を登る。4速フルスロットル。クローズドレシオだから3速でいけないこともないが、とりあえず4速に決定。3速では回転が高すぎるのとトラクションが大きすぎる。

1コーナー進入から連続して大きな横Gを感じたまま坂の頂上にさしかかる。登りながら3コーナーに備えて一度横Gを消す。3コーナーはまだ見えない。

迂回しながら1コーナーを登り、2コーナーをミドル・イン・インで走る。路面がフラットになり3コーナーの進入が見える。「あれ〜ッ!速すぎる」ブレーキングして3速に落とすものの3コーナーのインにつけない。せっかく長くクリップしてラインを見つけたかったのに。しょうがない。インから等間隔のところに見かけのクリッピングポイントを定める。

「次の周は登りの最後でスロットルを抜いてみよう。全開で登り切ってしまうよりクルマが安定するはずだ。それと3コーナーはポイントではなくクリッピングラインだ。」

とりあえず3コーナーを抜け長〜い4コーナーにアウトから進入。ここはインベタ。3速から4速。
# 実際の4コーナーはイラストより回りこんでいる。

「どこでインから離れるかが問題だ。エッセスの1個目の出口が見えないからな。」

とりあえず「ここ」と決めた地点でステアリングを戻し始める。できるだけスムースに横Gを消す。クルマにストレスのかかてないことを確認して右にステアリングを切る。ごくわずか。できるだけスムースに荷重が移動するように。路面が下り始める。アンダーステアを出さないようにスロットルワークに注意する。先が読めない時の常道、長くインについて回る。1周目よりペースが速いからその分だけ早くクラ理ながらうねっているエッセスの全貌が見える。

4速全開。下り。まだ最初の横Gが消えていない。「ここでスロットル抜いたら回るナ。」様子をみるために、スロットルを前荷重にならない範囲でできるだけ閉じる。

アウト側のガードレールに1mもないヘアピン手前の右コーナーを見据える。できるだけガードレールに平行になるように大きく回りこむ。ただしアウトには寄らない。路面が登り始める。

第6話に続く

※ 解説用コースレイアウトにあるシケイン(8コーナー)はスポーツカーレースの大きな事故をきっかけに作られたもので、全米選手権の時にはなかった。

≪資料≫