Home > YRS Media-Info >

prev | index | next  ]

君はクルマの運転が上手いと思うか?

それが軽自動車であれ高性能レーシングカーであれ、クルマは固有の性能を備える。だからそれぞれのクルマの性能を最大限に引き出して走しった場合、それぞれのクルマの限界に突き当たるのは当然だ。ということは、速く走るということは「クルマの性能の限界で走る」ということに他ならない。

しかし、いくらクルマを速く走らせることが楽しいからと言って、どんな運転手でもその限界を越しては速く走れない。レーシングドライバーでも同じ。むしろレーシングドライバーは性能を限界直前まで引き出すことを得意とする種類の人間だ。

一方では一般の人がサーキットを走る機会が増えてきたが、彼らにはクルマを速く走らせるセオリー(理論)が浸透していないのか、クルマとどう付き合って良いかわかってないのが現状だ。セオリーがわかっていないからクルマの限界がどこにあるかわからず、限界に近づく方法すら見つけられないでいる。あるいはもっと速く走れるはずなのに、セオリーを無視して走るからタイムが伸びない。あるいはセオリーを無視するから、速く走れば走るほど恐い思いをする。

クルマを速く走らせるには理にかなった方法で運転することが必要だ。

セオリーを理解すれば、クルマの限界に安全にしかも簡単に近づくことができる。クルマに余計な負担をかけずにすむから痛みも少ない。そして、操作を間違った時の危険度も低くなる。

絶対にクルマの性能を越えては速く走れない。速く走る為には自分が速く走ろうとするのではなく、「クルマに速く走ってもらう」ように運転することが必要だ。

クルマには、加速する・曲がる・減速するという3つの機能があるのは知っているだろう。その全ての機能がタイヤ、それも路面に接しているコンタクトパッチと呼ばれるわずかな部分を通じて発揮される。レーシングカーであろうとトラクターであろうとこの原理には変わりがない。つまり、運転するということは、君が行う操作がタイヤから路面に伝わることに他ならない。

しかしタイヤにも限界がある。だから、セオリーを無視した君の要求−操作−をタイヤは受け入れることができない。この点を誤解するとクルマは速く走らないばかりか、君が望む挙動を実行することができない。つまり君はクルマに裏切られることになる。

ではどうすれば速く走れるのか。答えは簡単だ。走りながらタイヤを中心としたクルマの状態を常に、かつ連続してつかむことだ。

日本から来た受講生には教えておいたが、アメリカにはサーキットを走る人に与える注意として伝える言葉がある。

「 Don’t Anticipate.Do React !」 だ。

訳すと「見込で走るな、反応して走れ」ということになろうか。つまり「刻々と変わるクルマの状況に応じて運転しろ、こうなるはずだという想像では運転するナ!」ということだ。

こう聞けば思い当たるふしがあるはずだ。「自分ではこうするはずだったのにクルマはそうならなかった」とか、「思った以上に...」とか、君の予測が見事に裏切られたことがあるはずだ。これは君が見込で運転している証拠だ。自分の得たわずかな情報を信じて憶測で運転している証拠だ。クルマさんが悪いわけではない。悪いのは君。君がクルマさんの都合を考えずに運転しているからだ。

クルマは忠実な機械だ。正しく操作すれば正しく働く。「しかし君の間違った操作を許してくれるほどクルマは寛容ではない」のも事実だ。

prev | index | next  ]