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こんなレースがあったら、間違いなく日本のモータースポーツは変わる!  (2/15/01)

4kmのコースを2列縦隊で進む。ギアは3速。コーナーワーカーが「頑張れヨ」とサムアップ。前のクルマのドライバーがリアビューミラーでこちらをうかがう。後ろのクルマは加速しては速度を緩めこちらを威嚇する。横のドライバーは手を振っている。そうは問屋が卸すものか。長い時間が過ぎ最終コーナーにさしかかる。チャンスは一度。2速に落とすか?いやペースが上がりそうだ。遠くにフラッグ台が見える。グリーンフラッグが動くよりも先に隊列の真上の空気がよどむようにゆれる。誰かがスロットルを開けた!スタートか?前方で隊列が乱れ4列にも5列にも。ンッ。横よりは先に出る。前が逃げる。後ろは遅れる。突如ずっと前にいたはずのクルマが目の前に現れる。ミスシフトか?フラッグ台の下を通る時には5速。30台のノイズと嘘のような静寂。大気全体が加速する。何かに祈りたくなるような気持ちを右足にこめる。とにかくポジションを確保しながら1コーナーに対して有利なラインに乗せなければ!ローリングスタート。レースが始まる。

5速全開からトリッキーな1コーナーを目指す。

「今、何周目なんだ?」「オッ、後ろのクルマがふらついた。シメタ!」「とんでもなくドラフトが効くな。」5速7800回転。前のクルマに届きそうだ。

待てよ! 今抜くとS字の速いヤツに裏のストレートで抜かれる。裏のストレートで抜いてブリッジと最終コーナーで引き離そう!

ブレーキングしながらターンイン。クルマがよじれる。クルマがきしむ。前のクルマがインを抑える。こっちはアウトだ。タイヤへの負担を減らす。見えているはずの景色が記憶にとどまらない!

1コーナーのアプローチまで下り、そしてターンが始まると進むほどにきつくなる上り。

とにかく。とにかくだ。息をつく暇がないとはこのことか。ウイロースプリングやリバーサイドを経験しているから速度にはなれているけど、それにしてもどうだ、このロールの大きさは。

クルマのバランスを取りながら走らなくてはならないし、ヤツに隙を見せては調子付かせるし・・・。「オイオイ、ここでインに入っても抜けないことわかってるんだろ!」

ドラフト(スリップストリーム)のよく効く高速コースだから、いつまでたっても後続を引き離せない。1コーナーのターンイン。目の前にクルマ。助手席のドアにくっつきそうに走るクルマ。リアビューミラーの中は、クルマだらけ。
「頼むから寄ってくるな!」「なんでそこでブレーキ踏むんだヨ」「オイオイ、そこからインに入んのは無理だって!」エアロデバイスのないクルマの5速全開。タイヤがグリップしているかどうかなんてわからない。クルマの反応を信じる以外にない。

ブレーキング。強すぎる。バランスが崩れる。できる限りゆっくり右足を戻し、クルマを安定させる。前方でタイヤスモークが上がる。誰かふらついたか?ここを抜ければ3コーナーで隊列が絞られる。ラインを外したのか?スライドさせたのか?
前のクルマが失速する。勢いを殺がないようにアウトから抜く。

「あ〜ぁ、あ。真後ろにつかれちゃったヨ。こりゃ1コーナーまでに抜かれるな。

ブリッジの下ではらんだ分だけ後戻りか。しょうがない。もう一度ターン7からやり直しだ。後ろのドライバー、目が真剣だゼ。」「とにかく、縁石には引っ掛けないように、ステアリングはこじないように、スロットルはゆっくり開ける、だ。」

慎重に、慎重に。タイヤのグリップを前後左右にうまく振り分けられるように。

横Gが減った分だけ加速に生きる。加速したければ横Gを減らすことが大切だ。道幅はメイッパイ使う。

この瞬間が勝負ではなく、ストレートエンドの速度が鍵だ!

ストレート。右足を踏み込む以外にはメーターとポジションの確認しかすることがない。

前のクルマと距離がある。縮まるようで縮まらない。そんな時こそ注意が必要だ。深呼吸をする。首を回す。片手ずつステアリングホイールから離して手首を動かす。

さもないと、速く走るための理性が本能に負けてリズムを崩してしまう。

クルマをコントロールする前に、自分をコントロールする。それがレース。

SCCAのレースに賞金は出ない。栄誉は激しく振られるチェッカーフラッグと、仲間の祝福。

それでもアメリカの偉大なるアマチュアレースの応援団は巨大だ。製品を使いステッカーを貼ってレースに参加し、好成績を収めればアクセサリーマネーが支払われる。地区チャンピオンシップで上位に入れば選手権に招待され、1マイルあたり1ドルのトウマネーが支払われる。レースを楽しむ努力をする人が報われる。SCCAクラブマンレース。

だから、チェッカーが振られても、SCCAメンバーは走ることをやめない。SCCA全米選手権の最高年齢チャンピオンは、フォーミュラアトランティックに参加した75歳。第一次世界大戦のパイロット。

ボクが日本で開催したい手軽なレース、ショールームストックレース。
SCCAの規則でもナンバー付きの車両に限られる。しかもワンメイクレースではない。みんなが乗っているクルマで参加できる。自分の好きなクルマで参加できる。

ところがショールームストックは26分の4に過ぎない。SCCAレースには、日本中のカテゴリーを集めても足りないほどに豊富なクルマが走っている。写真のアルファ。GTクラスのマシン。コストが安く、整備が簡単なチューブフレーム。実に本格的なレーシングカーを個人が作り上げ、所有する。日本人が見たらよだれをたらすと思うヨ。ショールームストックレースが開催できたら、次はアメリカ製超ど級ツーリングカーレースをやってみたい。

レースの魅力。それは「自分をコントロール」して速く走ること。結果として勝利がの女神が微笑む。

人の走りを見ることで自分の走りに奥行きができる。

人のレースを見ることで自分の楽しみも膨らむ。

レースに参加することで自分の世界が広がる。

モータースポーツをもっと手軽に、もっと楽しく、もっとみんなで

コースのあちこちに陣取るスペクテイター。

実はドライバーだったりメカニックだったり。1週間にも及ぶランオフ。ホテル代と食事代を浮かすためにもモーターホームは欠かせない。なぁに、夜は寝るだけサ。

「オイ、同じ太平洋地区から来たアイツ頑張ってんじゃん!」

「俺のレースは次の次か。」

ジョージア州中部の森は、1週間まるごと起きてから寝るまで自動車競走の聖地になる。